吉田基已新作『官能先生』はレトロで切なくてエロティック 恋心を官能小説執筆で昇華させる主人公

『夏の前日』や『恋風』など、切ない恋愛の描き手として人気の吉田基已さんの新作『官能先生』(講談社)1巻が6月に発売されました!

何と表紙がリバーシブルカバーになっており、表は通常仕様、裏面はまるで小説のカバーのように黄緑ベースの淡いレトロでスタイリッシュな豪華装丁となっています。


あらすじ

小説を書く傍らで生計を立てるために出版社に勤務している鳴海六朗は、夏祭りで占い師に仕事運を見てもらったはずが「この恋路はきっとうまくいく」と言われ首を傾げます。その直後、下駄の鼻緒が切れて困り果てていた年下の美女・雪乃と出会い創作意欲を掻き立てられます。偶然出会った彼女とは、もう二度と会うことはないと思っていたものの、行きつけの喫茶・鍵で新しく女給として働き始めた彼女と再会するのです。

一方で、会社の同僚からポルノ小説を書かないかと出版社を紹介される六朗。雪乃との距離が少しずつ縮まる中、彼女へのラブレターを官能小説という形で書こうと決心した六朗は情熱的に執筆に取り組み始めるのでした。

ゾクゾクとときめきが終わらない

登場人物たちの恋をしている瞬間の感覚が、今まさに自分の身に起こっているかのような感覚で体験できてしまうと言っても過言ではないのが吉田さんの描く漫画の世界の魅力です。登場人物が頬を上気させると、胸の奥できゅうんと音がして背筋をゾクゾクとした快感が走るのです。

そんな彼らが恋をする世界の景色はとても美しく、例えば今作では、2人が再会する神社の雨降りのシーンでは、六朗と一緒になって雪乃と出会った日の風景を忘れないと固く誓い、ひんやりとした雨の感触と雪乃の温かい肌を感じながら“恋の疑似体験”をしてしまうのです。なんて狂おしいんだろう、なんて切ないんだろう……! と思いながら読み進めていく先には強い情熱が待ち受けているのです。

小説を通して恋心を伝えるという六朗の試みは、果たして雪乃の心に届くのでしょうか。

2巻が発売されるまで、この行き場のない恋心をどうすればいいのか梅雨のこの世界で途方に暮れつつも、吉田作品を読み返して静かに待ちたいと思います。

<参考>
『官能先生』1巻 吉田基已 講談社

(貴崎ダリア / 画像・編集部撮影)

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