日本の寝取られ事情と樋口毅宏『日本のセックス』

小説家・樋口毅宏さんが2010年に双葉社より発刊した『日本のセックス』をご存知でしょうか?
350ページ超に及ぶこの長編小説は、とある夫婦の寝取られ(寝取らせ)事情と、そんな性的嗜好ゆえに巻き込まれた事件のミステリーなのです。

寝取られと言えば谷崎潤一郎

寝取られと言えば真っ先に思い浮かぶのが谷崎潤一郎。1対1の性行為にピンとこず、マゾヒズムな嗜好から想いを寄せる女性が他の男と関係を持ったり、女性を別の男性とシェアすることに性的興奮を催す男性を多く描いた日本の文豪です。

谷崎文学が好きな人は、寝取られに美学を感じると認めたも同然……とは言い過ぎですが、彼の作品に感銘を受けた現代の作家も多いはずです。

近年では漫画やアニメでは“寝取られ属性”という言葉が頻繁に使われるほど、その性的嗜好のファンは増えつつあります。

マゾヒストとカンダウリズム

本著は才色兼備の人妻・容子と、その夫で信用金庫に勤める夫の佐藤誠の物語です。佐藤には妻を他の男性に寝取らせて強い性的興奮を得る嗜好を持っており、容子は毅然としつつもそれに従い成人雑誌である月刊『リアルマニア』の寝取られ撮影に参加したり、佐藤に言われるがままネットで知り合った多くの男と関係を持ったり、スワッピングパーティに参加するなど性的な日常を送っています。

美しくインテリである容子に心を奪われる男性は多く、佐藤のディープすぎる性的嗜好も災いして、いくつもの事件に巻き込まれていきます。

作中で佐藤の性的嗜好については『カンダウリズム』と表現されています。これは、もともとは自分の妻の裸体を第三者に晒すことによって興奮する嗜好のことです。最近ではこれが転じて、自分の妻やパートナーを第三者に抱かせたり性行為をさせたりする様子を見て興奮する嗜好とされています。

寝取られというよりも「寝取らせ」と表現したほうが、より適切なんだそうです。

この嗜好は決して相手の男性の人格をも許容し女性をシェアするという感覚ではなく、「自分以外の男性に抱かせる」ことがポイントなのです。

自分以外の男性に抱かれている愛する妻ないしパートナーが、その男性の手によって痴態を晒し、ペニスの侵入を許している。愚かで矮小な自分は、それを眺めているしかできない。なんて惨めなんだろう──こういう思考の変遷が考えられますが、男性にはペニスが怒りゆえに勃起したりもするため、相手を寝取られたという怒りで勃起した際に「寝取られたけど興奮した!」と脳が勘違いし、それがあまりに気持ち良い興奮だったために癖になったという寝取られへの目覚めも考えられるのではないでしょうか。

横綱級の変態である夫・佐藤

物語の中で容子は毅然とした少し気の強い美人として描かれますが、その性根はマゾヒストです。心から嫌ではないものの、望ましいとは思わない夫の性的嗜好を受け入れることでマゾ心がくすぐられ興奮を得るタイプなのです。

しかしながら、佐藤もサディストというわけではなくマゾヒストで、心から愛する容子が他の男に抱かれ打ちひしがれる事実に興奮するのです。

極めつけが、容子が目の前で別の男に膣内射精された後に、容子の陰部に口をつけその精液を吸い上げるという行為です。

「俺はおまえのマンコから逆流するザーメンを見ると狂おしくなる。おまえの子宮がザーメンでびちゃびちゃに満たされると切なくなって頭の中がめちゃくちゃになる」
「なんつうんだろ。うまく言えないんですけど、愛惜しいんですよね。若い頃からAVでも中出し系が好きだったのは事実です。だけど、おまんこから逆噴射するザーメンを飲みたいとまでは、そのときは思わなかったなあ。やっぱり、中に出された相手が妻だからなんだと思うんです」(原文ママ、本著P89より)

佐藤は作中で、月刊『リアルマニア』の編集長・小鳥やカメラマンの薬師寺の前で語っています。

あり得ないと思う人が多い嗜好だとは思いますが、一方でこういった行為が震えるほど好きだという人もいるはずです。ノーマルとアブノーマルは紙一重。ある日ノーマルだった人がアブノーマルに目覚めるのも、こういった強烈な行為を目の当たりにしたり自ら知ってしまったりするからではないでしょうか。

横綱級の変態でありマゾヒストの佐藤と、タイプは違えど同じくマゾヒストの容子の夫婦が、どんな物語の終焉を辿るのか、普通のセックスがつまらないと感じている人はぜひ一度読んでみることをオススメしますよ。

<参考>
日本のセックス (双葉文庫)

(貴崎ダリア / 画像・編集部撮影)

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