素直に紡ぎ出される心情と繊細な色が紡ぎだす両片思いの切ない世界『ドラマ』

『ドラマ』は2005年10月10日にコバルト文庫から刊行され2011年12月20日にダリア文庫から加筆修正版が刊行された朝丘戻。さんの小説。

モデルの拓人にドラマ出演の依頼が来る。そのドラマの内容が同性愛だと知って嫌がるが、相手役を指名したのが憧れの俳優恵裕次だと知り彼の元へその真意を問いに行く。

実は裕次も拓人のファンであることを聞かされ、恵と話す中、「男同士だから無理」という概念にとらわれていたことを指摘され、「同性愛も恋愛のひとつだと思うな。場合によっては、男女の恋愛より辛いかもしれない」そんな恋愛を演じてみたいという言葉に、裕次への尊敬を大きくしそして自分の思慮のなさに気づき『ドラマ』に向き合うことに決める。

演技の経験のない拓人に裕次は協力を申し出、ふたりの距離が近づけば近づくほど、裕次を好きと思う気持ちが強くなり、役の中の自分にシンクロしていく。また裕次も拓人を傷つけまいとおどけた口調で紡ぐ言葉が、読んでいる側には痛々しく、もどかしい。

朝丘戻。さんの文章はひとつひとつが丁寧で、そして美しい。ドラマのタイトルは『白い傷跡』というのだが、白だけでなく、拓人が恵によって見たこともない色を見せられるシーンはどれも心を打つ。

高校生の拓人の言葉でつづられる心情は、時にぶっきらぼうだったり、年相応の可愛さのあるものだが、恵を思う時に紡がれる心情はどれも切なく美しく、そして拓人という人柄を現すように頑なで一途だ。

この本は『ドラマ』『白い傷跡』『ラジオ』の三部作で出来ている。『白い傷跡』は書籍化されておらず、過去に限定で朝丘戻。さんのサイトで発売されたことがあるが、それ以外では手に入らない。

筆者が持っているのはコバルト文庫の初版だが、思い入れが強い本だけにカバーにかけて大事にしてきた一冊だ。現在『ラジオ』を執筆中とのこと。『ラジオ』が刊行されたらもう一度きっと読み返すことになると思っている。

<参考>
コバルト文庫『ドラマ』(第1刷)

(天汐香弓 / 画像・編集部撮影)

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